「バリ島へ移住したい」と初めて主人から言われた時、あまりの現実感のなさに驚くというよりも「そんなこと実現できるわけがない」という気持ちの方が強かったのです。

一度も海外に行ったことのないわたしにはバリ島に住むなど想像もできませんでしたし、そもそも年老いた母を置いてどこか遠くへ引っ越すなどとは考えたこともありませんでした。
それに主人だって一度もそんな話をしたことがなかったので、わたしにとってはまさに寝耳に水だったのです。

だから初めて聞かされた時は「この人わたしをからかっているのかしら?」と、主人の顔をまじまじと眺めたくらいです。

けれど主人は本気でした。自分でバリ島移住に関して情報収集をし、セミナーに参加したりさまざまな人の話を聞いたり、今まで積極的に動いてきました。
そしてそんな主人を間近で見ているうちに、わたしの気持ちも少しずつ変化していきました。
話し合い不可能だと思っていたわたしの兄を主人が説得してくれた時は、改めて「これからもずっとこの人についていこう」と思ったものです。

そしてついに、主人がバリ島行きの航空券を予約しました。
ところが「いよいよ移住が具体的になってきたな」と思った矢先、事前に相談しなかったことで娘を怒らせてしまいました。

beautiful_smile_from_bali[1]

昨夜、残業を終えて帰宅した娘をアパートで迎えたわたしは、彼女の怒りの深さを目の当たりにしました。
娘はわたしを見るなり
「悪いけど帰ってくれない?仕事で疲れてるし今は何も話したくないの」、
そう言ったのです。

こんな風に娘から拒否されたのは初めてだったので、ショックでなかなか言葉が出てませんでした。
でもこれだけは伝えようと思い
「あなたが反対するなら、お父さんもお母さんもバリ島へは行かないから」、
そう娘に言いました。

けれど娘は冷めた目で
「そんなの、別にもうどうでもいいから」と言います。
そんな風に言われてしまっては、もう返す言葉もありません。

結局何も話せず帰ってきてしまいましたが、この先どうすればいいのか正直分かりません。