なぜバリ島へ移住しようと思ったのか、その理由を真摯な態度で伝えようとする主人。
それは子どもに言い聞かせるような態度では決してなく、娘をひとりの大人として認めたうえで話しているように見えました。
そんな主人の対応に娘自身がいちばん驚いたようで、先ほどまでの刺々しさは消え、主人の話に静かに耳を傾けています。

定年を迎えた後、わたしたち夫婦がどんな老後を過ごしていくのか、またバリ島で暮らすことがふたりにとってどんなに大切なことなのかを、主人は丁寧に説明していきます。

そして主人の話を最後まで聞き終えた娘は、わたしたちふたりに
「わたしが子どもだった。本当にごめんなさい」と改めて謝ってきました。
「わたしには相談もしてくれずに、ふたりで勝手に決めてしまったと思って悲しかったの」と娘。
「でもお父さんの話を聞いたら、わたしの考えが幼稚だったってことがよく分かった」
と、とても反省しているように言いました。

end_of_life

わたしは娘のことを「いくつになってても子どもには変わりない」と思っていましたが、主人は娘を「立派な大人」として扱っていたのですね。
だからこそ、娘に対して子どもの機嫌をうかがうような態度は一切取らなかったのだと思います。

今回のことで娘の態度や言動にいちいち落ち込んだりおろおろしてしまった自分が、本当に情けないです。
何より娘を子ども扱いしていた自分が、今回の騒動を巻き起こしたいちばんの原因なのだと気がつきました。
わたしが真摯な態度を取っていれば、娘もあんな風に怒ったりはしなかったはずです。

そしていつもの関係に戻り普通に会話している主人と娘を見て、「やっぱり親子だな」と改めて思いました。
時々は喧嘩して、お互い意地を張ってなかなか話し合うきっかけがみつからないこともあるけれど、結局はこうしてお互いの気持ちを伝え合って、仲直りすることができる。

娘からも反対されて今度こそあきらめるしかないと思っていたバリ島への移住話でしたが、またしても主人のおかげでその危機を乗り越えることができました。